昭和62年度 研究幸艮告 大分県工業喜式験全景
アスベストの確認試験方法の検討
佐 藤
無機化学科
分析化学科 二
宮 信 治
卜の確認法はいくつか報告されているが,同定法と して公式に採朋されている方法はまだない。
本研究では,Ⅹ線マイクロアナライザー(E‡〕九i A) を用いてアスベスト原石及び建築物の内壁の断熱, 防音材を測定し,正確で簡便なアスベストの確認方 法を検討した。その結果いくつかの知見を得たので
報菖する。
実験方法
人手できたアスベスト原石(クリソタイル,クロ ンドライト,アモサイト)と各種の断熱防音材とし て利用されている吹き付け建材につしユて,1ご記び〕方
法で行なった。
(1)試料の前処理
一般の吹き付け材は繊維状の物質に糊材として
種々の無機物質が使われているため,試料の分散が .しゴ1乗ず,繊維状の物質の表面を糊材等が覆っていて 観察が難しい物もある。又,ロックウ血ルの中に少 量のアスベストが混入している試料の場合は0.i 規
定の塩願で糊材やロックウールを溶解して残壇を観
察した。
試料をミキサーでほぐし,適量を2相継引田伽1‖刀 ピーかに採り,一方には蒸領水を他方には(j .1規定
はじめに
アスベスト(石綿)とは学術的な定義に基づく名
称ではなく,天然に産出する繊維状の珪酸塩化合物 に対する¶ 血般名称であり,」LO(国際労働機関)によ れば,「岩石を形成する鉱物の蛇紋岩及び角閃石グル
ープに属する繊維状の無機珪酸塩」と定義されてお
り表 1のように分類されている。鉱物学の分頬で
も,蛇紋岩系と角閃石系の二つに大別されている。 アスベストはその組成と微細構造のため,機械的 強さ,耐久性,耐摩耗性,不燃性,耐薫別生,絶縁性, 耐食性,親和性等他の材料にはない数多くの優れた 特性を持っている。その上,安価なため,建材をは
じめとして産業のあらゆる分野でさかんに用いられ
てきた。
一方,アスベストが人体に吸入されることによっ て,各種の障害を引き起こすことは以前から報告さ
れており,最近の研究で発ガン性物質であることが
ほぼ立証されている。
近年,学校を始め各種の建築物明内壁に断熱,防
音材として利用されている例が数多く確認されてお
り,それらがアスベスト粉塵の発生源となっている
ため大きな社会問題となっている。そのためアスベ
ストの分析に対する要求も急増している。アスべス
衰仙1石綿の種類
「 −〉Ⅵ】蛇紋岩系 ーー†クリソタイル(温石締またほ白石綿ト鉱物名もクリソタイル ▼仙 Ⅸ′ 払[Si 205](0モi )−
(サーペンティン系)
アモサイト(茶研削−鉱物名 カミンブトン閃首、ブリュネ関石
(Fe9 八触)7「Si 8022](OH)2
クロシドライト(青石綿卜肌鉱物摩 リー【べ、ソク閃石
(Na2Fe(i ‡)。9 Fe用f )2;二Si 80221(OH)2
アンソフィライト(直閑古)
(丸i g,Fe)てr 「Si 汚02ごニプ(0‡ 重)。
トレモライト (透角閃子り
Ca2Ⅳ蝮。[Si 8022](0}i )2
アクチノライト(緑「朋ゴ)
Ca2(Ⅸまg王γ ビ)穴[Si 汚0221(0‡ i )。
j
∃妄
r
卜妻†く≦﹁
L
角閃石系〝′ ツナY一
(アンヒポール系)
昭和62年度 研究報告 :短分県二こ業喜式験場
レり塩酸を50m川口え超音波をかけながらガラス俸で
よく分散させる′ 、二れをメンブランフィルタ血で吸
引ろ過し水洗する。試料がよ、く分散Lているところ
を潅ごぎ寺な大きさに切1電j ′ 儲潤ほ招∃試紆台(ト1ニ
ナ)にカーボンへ山ストで国定した後乾燥L9 スバ ッタリンブ装置で金を厚めに蒸着し9 形状観察放び
元素分析用試料とした。
(2)笑ま挨に便鞘した装置
形状観凛及び,元素分析は走査型電子顕微鑑J SⅨi 84n(口本電子(輔製)に′ ヱ「N5500システム(Tr acor Nりr t her n製)を装着したⅩ線マイクロアナライザ
【を使用した。分析はエネノレギ山分散型分光器
(三三DS)を使用した。元素マッヒングは画像処理プ ログラム(Ⅹ‡ SCAN)で処理したものを写真撮影を
行なった。
結果と考察
アスベストには蛇紋岩系ほクリソタイル,角閃石 系は表∨∧1〟〕通リ5種あり,合計6種に分額される。 二の内,内壁材等に通常用いられているのはクリソ タイル,アモサイト,タロシドライトぴ)3種類であ る。中でもクリソタイルは90%以上を占めている。
またクロシドライトは人体へ♂)影響が最も強いと言
われてし1るが,現在我国では使用されていない。ア
スベストぴ二卜代替材料として多く使摺されているも〟〕
にロツて=ウ血几(人道繊維状珪酸けぃレシャム)があ
る。 今回実験に補いた試料ほアスベスト原石および
内壁吹き付け柑として利用きれているアスベストを
を三体に行なった。
(1)形状組察
蛇紋岩系レ)クリ\ノダイノしは写真1の様に直径 し1.ユ〟nl 以トシ〕単繊維が教本から数百本業凍Lてお
りマ そJ )単繊維は表面が平滑で断面は円形である√
更」二それが集ま−)て写真2J 〕様にたき′ ご繊維状を
形成しているしニ ′ クリ\ノダイルほ他〃凝棉訟伏睾邦‡とH
異′ なりゥ 柔で1か′ な毒基経状でゆるやかに波打った形状
として視察さわる。
角関わ弄しリア:ミペストは写真3J )楳′ :ご形状で9
細い繊維が築去って大きな繊維状を形成していると
ころはクリリグ ナノしと∈司じである。Lかしヤクリソ
㌢イルとは明らかに異′ なY)た形三伏て観察さ れる。ま
ずクリソタイルユリも,脆∴帝情やすく直線的な針
写真∵3
昭和62年度 研究報告 大分県工業試験場
色をしており他ジ′ )「アスベストとは異なっているので
識別することができる。
写真 4はこ7ツタ「ト〟ルであるく.t コ、、′ クウールは
ん惹緻鑑であるた東学 その製造に産賀するいくつか 1_〉しユ\
♂J 特徴が観察されチ アスベストとの識別が可能であ る。そぴノ横雄‡は針状や曲線状ジ)物があるが9 表面は
平滑で断面ほ円形である。アスベストとび)最大出棺
違は繊維が束になっておらず1本】本が独立し予 繊 維の直径も不揃いであリラ 勢池澤㌣数十耳11と大き
㌧ また髄灘しり端が水滴状に膨か二)んでいることもあ
りこれはアスベストでは観察され′ ないロックウール
独特の形状である〕さらにロックウール㍑熊て寮廃
するためし〉.摘ま志し′ 〕塩鮭で処理Lノた試料では繊維状
ではなくなる。
(2)元素分析
各種アスベスト甘化学組成を表1にホしている
がヲ そカLぞれ多少J )不純物を含むぴ〕が普通であり苧
不純物の軽頚浄や量は産地によって異なる。 形状観察でクリソタイルと思われる写真、′ 5の視 野について分析した結果は長ト1しっ通りであり検出
された元素はマグネシウム,珪素および金であった。
余は試料作製時に表面コーティングしたものであ
る。マグネシウムおよび9 珪素の元素マッピンブを したもぴ〕が写共 6であ県マグネシ 1ウムおよび珪
素が繊維の郡市から検j 已」1されている。蛇紋岩系J 〕ク
写真脚4
写真叫5
摘H)i ヨ→:一Ⅰ⊂T一日∈ま 12;鮮ま Tトト558日〔1I TRトこE卜」トこ⊂)Gl T【しき 5H三HE†ヰJ OL妻
⊂来車5ロト;(∋J 粥独往詫万 =
㌧・I F≡ = 1¢≧ヰ 1窃 2ヰ詳
区ト1
昭和62年度 研究報告 大分県二L業試験場
写真−−1丁
写真】6
ノソデイ㍉し {ノ㌔1勘Si 2(〕5((〕H)1)ル偶数ノi 二素と同
咋伸こ視察結字ミと㌦′ ユ致する。二∴フ」た〆)雪
ツ1巨ノダノルて あるこご/うて雅語できる。
耳雛「釆u∴ノ・∵1ペストぎ真 7し/り視野に/ノ〕いて分
析した結果悠、三言 2しり通りでか〕楓Ll ほれ予五菜:‡
′ ニ′ 、ネシT∴く、。珪素ヲ 鉄まi 上〉′ ノミ、仝であ一∵7二。各ブ亡弄
し′ ′ )マッ巨ンブ甘写真針け埴りてこキー∵た。角閏圭潔
L∴=′ モサイトト〔亘1「ビ9 九′ t g)7くSi ト(〕∠21(0三重二)2ノ 叫賃
成ナこ宕±よく▲ 致してい る,ただし∴′ ′ モサイトの化
二i 鴇!三・貴は産地:ニユって構成元素が多少異/なること
こ,アンソフィライトとも同じ構成元素であるた琉
元素廿析〃結黒だけで烏アモサイトとアン、ノブイラ
イトノフ、)[メニ刺するニヒは困難である。
写真−8
Tr ’」−ヨ5四日l こノI TRト::巨F・・」卜:〔)Gr T−L蓼 5HI トノEトj J ・OL妻 ⊂しけ5D「:田 8辺8ゝく昏\J = ロ
=E[)ユヨー・こ)⊂:T−5昏 1∈:.三ヰ
\−■ F≡.= ヰ田ヨ∈ ユ必 三ヰ必
昭和62年度 研究報告 大分県エ… 葉書式験i 募
角閃石系のアスベスト写真−hM9の視野について分
析した結果は図3の通りであり検出された元素は
ナトリウム,マグネシウム,珪素,鉄および金であ )た。各元素ぃてツピンク烏鳶真抽ブ〕通i 〕である。 クロシドライトの化学式は一般に((Na2Fe(王り39
Fe(三三Ⅰ)2[Si 8022])と表わされているが産地によっ
てほマグネシウムを含んだ物咤あり,マグネシウム
も構成元素と考えられる。またアスベストの包も青
灰色でありち 元素分析,形状観察の結果からクロシ
ドライトと判定することができる。
写真仙9
し」ED l ヨー〔〉⊂丁−2き 13… =7 TN−55◎田〔)I TRKENトく⊂〉GL7‘■し1三H王KE㌢」J OU
⊂.し㍍∵5⊂■卜:∽.¢◎BkeV = 0
VF三 = ヰBヨ∈ ま臼 三ヰ8
園−3
写真¶ 10
昭和62年度 研究報告 大分県工業試験場
角閃石系のアスベスト写真一11の視野について分
析した結果は図ん4(7)通りであり検出された元素は
てグネシ ウム,韓素,かレシウム,鉄および金であ
った。各元素のマッピンブは写真12の通りである,
かレシウムを含んだアスベストには,トレモライト
(Ca2Ⅸ4g5【Si 8022二(OH)2),アクチノライト(Ca2
(九乍gFe)5[Si 8022二(()H)2)の2橿顆がある。ニ
ジ〕2種類の組成上の違いは鉄の有無である。しかし,
この試料の鉄のX線強度は比較的弱いため,鉄を不
純物として含んだトレモライトの可能性も考えら
∼L,元素分析の結果だけでアクナノライトであると
ミよ言い切Fj Lない。〕
写真−11
TN55日ぼI OI TR卜くE卜1L(OGYU ⊆HエKE卜J J OU ⊂’しj 「5ロl  ̄:1¢ 三三臼k巨1v】’ = 16
=E[)1≡ト〔)⊂:T一日日 1∈;:ヰ5
VF5 = 284∈; 1日 24〔ヨ
図−4
写真−12
昭和62年度 研究報告 大分県工業書式験場
ロックウール写真w13の視野について分析した結 果は図「5の通りであり検出された元素はアノレミニ ウム,珪素,かレシウム,鉄および金であった。各 元素のマッピングほ写真14の通りであり9 ロック ウールの成分である珪素,かレシウムチ アルミニウ
ム及び不純物として混入している鉄で構成されてい
ることがよく分かる。またアスベストとの特徴的な
違いはアスベストにはばとんど含まれていないアル
ミニウムが多量に検出されることで,ニれによりア
スベストとの区別は容易である。
写真−1j
卜忙)卜j i 2−[)E⊂−∋≡く+:L2≡だ7 ・:2:・8.8田ロバ+∈仁∈氾妃
TN−5588・○ ‡TF〕卜:E卜J 巨:CI Gしす■ し】5HヱトこE「」J ・:)し重 ⊂しけ ̄5⊂汗 ̄‡(ヨ.D8ぜ申込八■ = 辺 R〔1工
■ヽ】t F三 = ネロ∋∈ 1田 三48
図脚5
写真−14
昭和62年度 研究率匡告 大分県工業喜式験場
曲が〉J ているのが角閃石系ぴつアスベスト,そのヱニに
あるやや波打っているこ′ 〕がクリソタイルと思われ
る。ニのマッピング烏写真∨−−i 8であリ9 角閃石系と
思われる破綻はラ 豊実タ ㌫㌧ てケネシ予ム成鳥ジャ
トリウムで構成書かており9 形状儀察の結果と併せ
て考えるとタニシドライトであることが分かる。ク
リソタトルと思われる繊維はマグネシウムと珪素で
構成さj Lておリ9 観察の結果と一致する。またクリ
ソタイルからナトリウムが横川されたが徴還二であり
不純物であると思われる。
m一般の吹き付け柑にはアスベスト各種および丁コいノ
ブ二7一ルとが混合物とLて健司されているもレj も多 くある。写真15J ノ)元素マッピンブは写真16J 〕通
慣−−′㌻っているノい、繊維そまかしシャム予 を7キナナ、
珪素ヤ フ7′ }レミニウムおよび少量J )鉄かち構城されて
おり,形状からもロックウールと分かる。斜めに集 束Lている繰椎は珪素およひマグネシウムで構成さ
れていることからクリソタイルであることが分か
る。去た写真 i 7は形状J 〕異なる2軽頬J )アスベス
トが観察される。形状からみて直線的で途中で折れ
写真一旦6 写真州互5
r 芋蔓一∵
おわりに
キ研テな/ノた研究鉦結乳∴肛闇偶にょる形状観 祭トヒ元素分鮪 はそれぞれ単独でアスベストu′ ) 判別を行なうことは問題点も多いが,双方♂〕結果を 組み合来せて判断することによi )讐 かなり有効なア
スベストの確認プJ 法とする辛ができる。また▼〟∨′ 部レ)
アスベストについてそぴ)種類を判定することもでき
写真仙ま8
トクリソタ1旬ぺが軌末二観察でぅ 拙い繊維が集束し 柔らかく波打った形をLており,他付紙推状物眉
とは異なった特徴があり,確認点可能である。 2,角閃む系ぴ)アスベストほ直線的であり5 たまに
昭和62年度 研究幸艮告 大分県工業喜式戸検場
七。そのために元素分析でアルミニウムやかレシ ■
ウムが検出さメLる。その対策として試料を前もっ
て酸で処理を行なったり,元素マッヒンブを行な
うことによってはとんど解決できるくつ
6.形状観察七元素分析では判別ができなかったア
モサイトとアンソフィライトやトレモライ㍉
アプチノライト等については,Ⅹ繰回折装置を用い
結晶構造の違いによる確認方法も検討する必要が
ある。 析を行なえば確認が可能である。
3∴元素分析ではロックウール,アスベスト共に不
純物や産地により,化学式で示さ々Lて:いる構成元
素異なることがよくある。
4.ロックウ」ルとアスベストの特徴的な違い㍑次
の通りである。ロックウ】ルは,
(1)敲で分解し繊維二伏でなくなる。
(2)繊維1本1本が独立している。
(3)元素分析でアスベストに含まれていないアル ミニウムが,検出される。
5.実際の試料の場合,繊維状物質単独で使用され
ていることはなく,他の材料,例えばセメントや
炭酸カルシウム等と複合材料ヒして使われてい
最後に,こじり実験に使用LたE王)1′ I Aは日本自転
車振興会から競輪収益の一部である機械工業振興資
金の補助を受けて設置したものである。